続 ・ たかがリウマチ、じたばたしない。

このブログは「たかがリウマチ、じたばたしない。」の続きです。喰うために生活することも、病気でいることも闘いです。その力を抜くこと、息を抜くことに関心があります。

「20代でマイホーム、持ち家率3割超え」という話

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小津安二郎東京物語(1953)で、長年連れ添った妻東山千栄子が死んだ朝、主人公の夫笠智衆が見慣れた海を見て呟くセリフが際立っていた。

「・・・きれいな夜明けだった。・・・きょうも暑うなるぞ。」

と言ってスタスタ家に戻っていく。

まだ敗戦直後、厖大な戦死者の列に、亡き妻を置いて共に弔うような静的な拡がりを感じさせた。

そして一方、戦争に負けようが勝とうが、くそ暑い、なんとかせにゃならん陽は毎日昇ってくるわい、といった動的な空気もこもっていた。

 

ワタシは、後段の「きょうも暑うなるぞ」というセリフが圧倒的に好きである。

天と地がひっくり返ろうが、自分の毎日は淡々と過ぎていくしかない、といったふてぶてしさが好きである。

 

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最近、ニュースを読んでびっくりしたのは、「20代でマイホーム、持ち家率3割超え」という記事だ。

 

20代でマイホーム…持ち家率3割超えのワケ: 日本経済新聞 (nikkei.com)

「あまり買い物をしない」「所有欲が少ない」――などと言われることが多い最近の若い世代。ただ「人生最大の買い物」とされる住宅については3世帯に1世帯がマイホームを保有するなど、少し趣が異なるデータがあるのをご存じだろうか。家計調査でみると、若い世代の住宅所有の割合は最近、着実に上昇している。

 

こういう話は、とてもいい話だ。

政府やどこぞの知事の、コロナ問題の不手際やオリピックがらみのスキャンダル報道で、キーキー大騒ぎしているネットの裏で、黙々と自分と家族を支えているふてぶてしい姿が浮き彫りになってくるからだ。

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どのように考えても周辺世界とのやりとり(関係)は、自分の呼吸、摂食、排泄をする身体から始まる。

それはワタシたちが出発点とする生物的自然の真理だ。*1

政治やマスメディアが何をわめこうが、それは遥かにちっぽけな空間の話だ。

そして自分の延長線上に自分を拡張して投射できるのは、まずは家族(やパートナー)までだ。

それ以上は、強制や洗脳(マインドコントロール無しに自分の正常さを保てるかどうか怪しくなる。

我に返って(剥ぎ取って剥ぎ取りまくって)立ち戻ろうとするとき、信じうる極限は自分自身、せいぜい無条件に自分を投射し得る家族(やパートナー)までになる。

 

世帯主の年齢が29歳以下の二人以上世帯の持ち家率が2020年で33%というのだから、まず家族が形成されていると考えて間違いないだろう。(もちろん30歳代の持ち家率も上昇しており、総じて若い世代の持ち家率は上昇している)

 

ワタシがこういう傾向に感心し、安堵し、応援したくなるのは

不安定就労の若い世代が、低賃金に喘ぎ、家や車の購入は夢また夢、狭苦しい部屋でせいぜい低価格のPC、スマホ、ゲーム機の買換えくらいの消費しかできず、根こそぎ世界の大資本の「貧困ビジネス」の餌食になっているかようにみえることがあったからである。

 

結局のところ、ゆとりのある男女が結婚し、ゆとりのある夫婦が子供をもうけ育てる時代と言うことができ、それは日本の婚姻数、出生数がそれぞれ戦後最低、過去最低になった重大な理由になっている。*2

 

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結婚適齢期にある20歳代の世帯の3分の1が持ち家を持つという階層を

現在の婚姻数と持ち家率の(掛け算)として考えると、世代全体を代表することはまったくなく、一部の人々と言わざるをえない。

これを仮に新エリート層と言ってみると、かれらは、安定した職業を持ち、適齢期を迎えたら、きっと両親・周囲に祝福された結婚をし、子どもたちを存分に可愛がって大学くらいまでは惜しみなく教育に勤しみ、ローンの厄介になっても自分と家族のために家を持とうとする人々だと思える。

 

この新エリート層は、間違いなく、その政治選択や、思想・文化・エンターテインメント消費の隠然たる主流であり、平穏と安定を指向し実現してしまう層だと考えられる。

つまり、この層の生き方にサブカルチャー(日常の生活思想)の価値が集約されていくことにり、現在の強靭な思潮をつくっていく層になる。*3

 

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なぜ、若い世代に持ち家の購入意欲が活発なのか。

記事によれば

❶ 住宅ローンの低金利。2016年のマイナス金利導入後は0.3~0.4%台。

❷ 若年層や女性の就労環境の改善。安倍政権の2013年以降は雇用状況が安定。

❸ 住宅購入は資産形成の一環。中古の一戸建て・マンションとも成約件数・価格が安定的に上昇しており、物件の売り時も考えられている。

 

一方、持ち家購入のリスクはどうか。

❶ 住宅ローンの負担増。家計調査では、29歳以下の負債は増加傾向、2020年は690万円で2002年対比440万円増。

❷ 金利変動。住宅金融支援機構によれば68.1%が変動型を選択。長期返済期間中の金利変動に耐えられるか。

❸ 金融資産による資産運用にくらべ負担が大きい。長期の返済のため投資用資金が少なくならないか。

 

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ワタシには、若者から遥かに遠ざかった40歳代に、仕事の合間に株式投資を始め、新興市場デイトレーダー気取りで売買に耽ったものの、本業の仕事に追われつい「放置」したところ、倒産、上場廃止になるまで気付かなかったという「不祥事」がある。

それで当時の年収分を失った。

それ以来、株へののめり込みは諦め、特に高配当でもない大型株長期保有の「放置」に変わった。

 

若い新エリート層はワタシよりずっと(ふてぶてしく)冷静・聡明に見え、「専門家」が指摘するリスクはよくわかっており、問えばきっと答えを用意しているだろう。

不可抗力(想定外)もあるだろうが、現在も今後も社会を経済的にも思想的にも支えるだろう「メリハリを付けたお金の使い方」をするこういう人々の存在をワタシは支持している。