続 ・ たかがリウマチ、じたばたしない。

このブログは「たかがリウマチ、じたばたしない。」の続きです。喰うために生活することも、病気でいることも闘いです。その力を抜くこと、息を抜くことに関心があります。

憲法改正を急ぐ必要は無い、私論 (8月に当って)

ξ

ここしばらく関東は今年最高の暑さのなかにいる。

わざわざ外出してマゾ的に身体を酷暑にさらすなんてやめて

エアコン効かせた室内でストレッチ、さっぱり汗をかき

昼は、いつもよりしょっぱくした、うどん、ラーメン、中華風炒め物の類を食べる。

いまはとても旨く感じる。

冬にこんなに味を濃くしたら頭が痛くなるか。

 

昔、北国の真夏、夜中に寒さでゲホゲホ咳きこみ、あわてて閉め忘れた窓を閉めにいった記憶がある。

いまは毎年、夜間もエアコンつけっぱなし、あの頃を夢のように思いだす。

こんな日はとにかく無理をしない、真っ昼間のビールも悪くない、パートナーや子供たちと狭っ苦しくガヤガヤ、時間つぶしをしているのがちょうどいい。

堅苦しい避難所に行ったときよりずっとマシ。

どうせ秋は来る。

 

 

ξ

日本によい、理想的な憲法を与えることが、占領軍、つまり米国政府の国益に沿うことだったのです。・・・

戦争で多くの愛する家族を失い、国の無責任さをつくづく思い知り、自分の無力といい加減さにも思い至り、彼ら(日本人)は、占領軍の促す価値観に説得されつつ、また、自発的にも、そちらに宗旨替えするようになったのです。

それで、当然にも、占領軍の与えてくれた憲法が、自分の新しい価値観にぴったりだと感じるようになったのでした。

 

加藤典洋『戦後入門』、筑摩書房、2015)

 

ワタシのように「戦後民主主義」と呼ばれる思想を教育された者にとって、上記のような憲法の経過は、よく理解できるものだった。

 

第1条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。

第9条① 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

 

憲法前文全てと、引用した第1条第9条は、こんな高らかな宣言がありえるだろうかというくらい記憶に残っている。

天皇は象徴であって(絶対、元首ではない)、もう二度と天皇制絶対主義の時代には戻らない、もう二度と他国に侵略戦争をしかけない、戦争は放棄するという戦後日本の貴重な価値を刷り込まれた。

その意味で、ワタシに対する戦後教育は成功したのである。

 

ξ

これは未確認の伝聞ですが、安倍首相によれば、集団的自衛権行使に道を開いたとたん、憲法改正に向けた米国からの矢の催促が噓のようにやんだ、ということで、そういう話がまことしやかに一時期、囁かれたようです。・・・・・

というのも、憲法9条があっても集団的自衛権の行使が可能なのであれば、米国は自衛隊を自由に自分の指揮権下で使えることとなり、米国側の所期の目的はこれで達せられたことになるからです。

もう憲法9条の空文化は、国内的には、未了だとしても、国際的には、ということは日米間では、ほぼ--90パーセント--完了しているのです。

 

加藤典洋『どんなことが起こってもこれだけはほんとうだ、ということ』、岩波書店、2018)

 

上記の、際立って優れた見解によれば、国際的には(とりわけ日米間では)憲法9条の改正は完了していることになる。

 

安倍首相退任後も、ずっと改憲論議が続いてきたものの、すでに2014~2015年の安保関連法の制定によって、自衛隊活動を中心にアメリカの軍事戦略に完全に組み込まれる仕組みになった。

 

もともとアメリカの要請によって憲法改正論議(第9条)は始まったのだが、安倍氏らは、改憲の長期的な手続きによらず解釈変更により安保関連法を成立させた。

この結果「米国側の所期の目的はこれで達せられた」ことになった。

ところでこの場合、喫緊の他の政治課題をさしおいて、改憲論議を急ぐ必要がどこにあるだろうか。*1

 

ξ

引用文の著者・加藤典洋氏と異なり、ワタシは安保関連法によりアメリカとの間でギクシャクしていた憲法9条の問題をさっさと解決してしまった安倍氏の「リアリズム」をずっと気に入っていた。

安倍氏の「リアリズム」は、その一方で、ロシアとの間で未実現だった平和条約締結の長年にわたる交渉にも表れた。

日ソ・日露間の平和条約締結交渉|外務省

 

元外務官僚の佐藤優氏は、安倍氏のその活動を高く評価していたが、親米派ウヨクによってロシアとの平和条約交渉が阻まれてしまったと認めている。

 

ξ

現在、東・東南アジア、太平洋地域への中国・ロシアの関心ははっきりしているし、日本でもたとえば台湾有事に備えた軍事行動、関連法の整備、社会インフラの整備に向けたシミュレーションなどは国レベルで為されている。

ただし現時点、有事などの緊急事態に対しては改憲に関係なく必要な法整備・インフラ整備は十分可能にみえる。*2

実務上、憲法改正など急ぐ必要は無いと思える。

戦勝国から押し付けられた憲法の改正」などと騒ぐ古典的ナショナリストをどう始末するかという、国内問題だけが残っているようにみえる。

自民党中枢は、憲法改正がプライオリティーの第一で無いことをよく承知しているのではないかと想像している。