続 ・ たかがリウマチ、じたばたしない。

このブログは「たかがリウマチ、じたばたしない。」の続きです。喰うために生活することも、病気でいることも闘いです。その力を抜くこと、息を抜くことに関心があります。

「世界の秘密」を握りしめる陰謀論  その2/2

これは

「世界の秘密」を握りしめる陰謀論  その1/2

の続きです。

 

ξ 

たぶんステロイドの長期服用のせいで、ワタシは不安神経症抑うつのような不安定な精神症状を体験してきた。*1

そのうちにヒトにはスキゾフレニアと呼ばれる心的傾向があることも知った。

 

❶ Aさんは、ファンタスティックな妄想の世界をアナザーワールドと名付け、そのなかで山姥(やまんば)と一人で闘い続けていた。

 

❷ Bさんは、あるグループに街中で後を付け狙われていて、退院して地元に帰ったら、再び付け狙われるに違いないという妄想的確信を持っていた。また、Bさんのなかには女性が同居しており、2人で助け合いながら生活していた。

 

❸ Cさんは、組織に狙われており、その組織の人間が体のなかに入り込んで、夜な夜な悪さをしてくるので、自分なりにいろいろな工夫をしながら闘い続けている。

 

❹ Dさんは、 悪魔から嫌がらせを受けているという妄想を持っている。嫌がらせをを受けているということは、自分の体感をもとに考えると間違いのない事実であるという。

 

これらは、そこらへんの本屋に置いてある医学図書の事例だが、ネット上でいくらでも探すことができるありふれた事例だろう。*2

 

こうした妄想が顕在化した結果、日常生活に差し支えるようになれば、この妄想には精神医学的な呼称が様々につくだろうが、それは専門医に任せる話だ。

 

ワタシが教えられたのは、こうした妄想には共通性があることである。

一つは、アナザーワールドであれ、そこに住む山姥であれ、あるグループであれ、組織であれ、悪魔であれ、一般的にみてその存在が承認できないものを、見えないものをなぜ見てしまうのか。

もう一つは、それらは必ず敵対する存在で、なぜ自分はそれと闘わなければならないと信じてしまうのか。

 

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ξ

ヒトは未開の妄想(=陰謀論に類似したフィクション)を次から次と片付けてきた歴史をもつが、自分自身を巡る不調和を見つけ出しては、新たな妄想を生み出しているように見える。

 

一般的にみてその存在が承認できないもの(見えない対象)であるなら妄想と呼ぶほかないものであり

❶ それが存在すること

❷ その存在と闘わなければならないこと

2つは、いずれも妄想になる。

 

ワタシが用心している陰謀論

❶ 一般的にみて理解できない「世界の秘密」(見えない対象)を知っていると言いふらし

❷ その「世界の秘密」に抗して、誰に頼まれたわけでもないのに、闘わなければならないと無用な使命感(ミッション)を持って他者を巻き込む思考である。

これらは自分の体感をもとに考えると間違いのない事実という妄想的確信があるため、無用な使命感(ミッション)をあきらめることができない。

 

このパターンは、一般的にみて理解不能な「秘密」「真実」(見えない対象)があり、これに従わなければ浄化されない、病気が治らない、救済されない、滅亡してしまうなどとワタシたちを恫喝する「誤った思想」に共通的にみられるものである。

 

ξ

陰謀論や「誤った思想」に惹かれる人の心理については、「専門家」が「専門的」に解説している記事がたくさんあるが、ワタシがわかるようにハッキリ言えば、社会構成上の問題は決して無視できず

地位的あるいは経済的に「主流」エスタブリッシュメントから外された地位や財の無い被支配層は

「俺は凡人が知りようがない「世界の秘密」を知っている!」

といった神がかった思考のみによって他者から自分を区分することつまり大衆蔑視による優越性の確保と自己救済に陥ること、があるからだと思える。*3

 

それは、最初からヒトとつながる普遍性が排除されており、袋小路に入ることが(あらかじめ)決まっていると言ってもよいと思う。

 

 

《参考》

最近のマスメディアの陰謀論についての典型的な論調は次のようなものです。(ワタシはこの全てには首肯できませんが)

 

反ワクチン情報の拡散は陰謀論と共通項をもつ根深い問題です。

明らかに誤った情報に反論・反証するのは簡単です。

しかし「向こう側」の人の耳には入りません。「こちら側」の情報発信は陰謀の一部と消化されてしまうからです。

陰謀論は強力な誘惑です。「自分は真実を知っている」と優越感に浸れて「この『世界観』だけ信じればよい」と思考停止を許してくれます。

麻薬のようなもので足抜けは困難です。

大事なのは、まさにワクチンのような「予防」でしょう。

「正しい情報を広める」といった対症療法を進めつつ、長期では情報の取捨選択やメディアリテラシーを高める教育プログラムを充実させることが重要だと考えます。

 

(高井宏章(日経新聞編集委員ワクチン誤情報拡散: 日本経済新聞 (2021.8.9) )

 

 

*1:

yusakum.hatenablog.com

*2:

高橋昇「医療観察法病棟における当事者研究の実践」、臨床心理学増刊第9号、金剛出版、2017.8 

*3:

yusakum.hatenablog.com